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ゲーム『薄桜鬼』の感想だったり二次創作だったり
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斎藤さん、


ねぇ、斎藤さん…




は、はじめ、さん?




-愛の言葉は密やかに-




西洋の文化で今日は、「想いを寄せる人に贈り物と言葉を贈る日」だと聞きました。

だからこそ思い切って、今日は一さんにいつもの感謝の気持ちを伝えたいな、って思います。

「頑張れ、千鶴!私なら出来る!」



そうやって、自分で自分を激励して…いつもより沢山の夕餉を作って、

街に出た時に買った和菓子をそっと戸棚にしまっておいた。

桜の花びらを模った飾りも気に入って、一さんに渡したいなって思ったから。

気に入ってくれると良いけど。


夕餉の支度も終わって、普段なら帰宅しても良い刻限なのに・・・

一さんが帰ってくる気配が無くて、さすがに心配になってきた私は、

家の外まで様子を見に行ったのだけど。


「遅いなぁ…どうしたんだろう。」


やっぱり、望む姿は見えない。


暖かいうちに食べてもらおうと思って作った料理も、

段々と温もりが引いていく。


「沢山、作りすぎちゃったかな。」


和菓子をしまった戸棚の扉を、何度も開けては閉めて。

其の度に胸の奥がジンと痛む。


「帰りが遅くなるなんて、昨日は言ってなかったのに。」


ぐるぐると思考を巡らせていると、其れは次第に暗い靄の中へ。


「一さんのバカ…。人でなし。」


卓袱台に伏せって呟く言葉はまるで咎めるようなものばかり。


張り切りすぎたのか、次第に目蓋が重くなる。
いつの間にか私は、うとうとと転寝をしてしまっていたのです。


----------


「ただいま。」


用事を済ませて家に戻ったのは、いつもより遅い時間だった。

いつもなら、迎えに出る千鶴の姿がない。


「千鶴、帰ったぞ。」


何かあったのでは、と少し足早に室内へと歩みを進めれば、
居間の卓袱台でぐっすりと寝ている千鶴を見つけ、安堵する。


寝入る千鶴の肩を揺するも、深く寝入っているのかなかなか起きない。

「おい、千鶴。起きろ。」


呼びかけにも答えない千鶴に、少し悪戯でもしてやろうかと思う。

俺だってたまには、そういうことを考えるんだ。

無防備に寝ているお前が悪い。



思い立ったが吉日、とばかりに、寝入る千鶴の背後に腰を下ろせば、
後ろから華奢な身体をぎゅ、と抱き締めてやる。

「ん…、」

僅かに身じろぎをしたがまだ起きる様子が無い。

普段はあまり見ることの無い反応を見ることが出来るのは、
なかなか興味深いものだ。

露になっている白い首筋に、少し唇を寄せてみる。
思えば俺が羅刹となって、血に餓えた時にはこうして…


「雪村…、」


当時を思い出すように千鶴の耳朶に唇を寄せて、
軽く噛むように歯を当てる。


「…ッん、」



擽ったいのか、肩を竦めて僅かに声を零す。


昔を思い出せば余計、どれだけ俺が助けられ、
支えられてきたかを痛感する。


俺は、お前無しでは生きていけそうにない。



「千鶴、好きだ…」



耳元で小さく囁いては傷跡の無い耳朶を舌先で撫でる。



ビクリと身を揺らして、やっと目覚めた千鶴の…

その時の顔といったらない。


「は…は、は…はじめさん!」


「なんだ。…ただいま、千鶴。」


「な…なななな…なんだじゃないですよ!何し…してるんですか!」


顔を赤らめて問いただす様が微笑ましくて、
自然と笑みが零れた。


お前と居ると、本当に飽きないな。


「ただいま、千鶴。」


向き直ったその身体を、今度は正面から抱き竦める。


「お…お帰りなさい。今日は遅かったんですね。」


「あぁ、少し、用事を済ませてきたんだ。」


「折角、お夕飯沢山作ったのに。」


「…すまない。」


「折角、一さんに贈り物しようと思ったのに。もうあげません!」


「…千鶴、すまないと言っている。それに、俺もお前に贈り物があるんだ。」


「え?」


「以前聞いた、贈り物をする日だと思い出して、な。」


「一さん…、ちょっと待ってください。」



言うや、立ち上がって戸棚に向い、ガラと扉を開けて小さな包みを取り出す。

俺の傍に再び戻ってくれば、ズィと包みを差し出した。


「これは…」


「一緒に食べようと思って、買いました。桜の飾りが、綺麗だったから…」


「有難う。開けて良いか?」


「はい。」


綺麗に作りこまれた桜の飾り紐を解けば、中から桜色に染まった和菓子が顔を覗かせる。


「…美しいな。食べるのが惜しいくらいだ。有難う、千鶴。」


「いいえ、どうしたしまして。」


そう微笑んだ顔が、この世の何よりも美しく愛おしいと思った。


「では、俺からはこれを。」


仕事の後に町まで買いに出た品を千鶴の前に差し出す。


「有難う御座います。何だろう…」


ガサリと音を立てて包みを解けば、中からは小さな箱が一つ。
その箱を手に取ってゆっくりと開ければ、桜の飾りが入った髪飾り。


「わぁ、綺麗…。つけてください、一さん。」


髪飾りを手にとって、黒い綺麗な髪につけてやる。


「どう?どうです?」


「思ったとおり、似合っている。」

はしゃぐ様子を見て、俺も自然と顔が綻ぶ。



「一さん、八つ当たりしてごめんなさい。」


しゅんとした面持ちで告げる千鶴の髪をさらりと撫でてやる。


「いや、俺も、帰りが遅くなってすまなかった。折角の夕飯が…。」

「冷めても美味しいから、大丈夫です♪」


くすくす、と楽しげに笑みを浮かべる千鶴が、
本当に愛おしくて、堪らなくなって抱き締める。


「は、一さん…。」

優しく抱き返してくれる様子に、心が温まる。


「千鶴、就寝前の言葉、今宵は今聞かせて欲しい。」

「え…でも、は…恥ずかしいですよ。」

「頼むよ…、千鶴。」

少し考えあぐねていたようだが、意を決したように俺の耳元に唇を寄せる。



「一さん、…大好きです。」



「ありがとう。さ、夕飯にしよう。」

「はい!」





いつだって、本当の想いを伝える声は密やかに。

それでも、どんな大きな声よりも心に届くことを、
俺は知っている。



他の者に聞かせるなど、惜しいと思う俺だからこそ。







----------
キリリク444。(斎千)
yuriさん、お待たせしました!
バレンタインデーってことで、ちなんで書いてみました。
(書いてたら日付越えた…泪)
でも、当時バレンタインなんてまだ無かったと思うんで、
贈り物を贈る日らしい、ってことにしときました。

そして、ちょっとだけ艶めいたことしてみたり。
こういう微妙な雰囲気、実は好きなんだ。
真っ向エロスより、チラリズム的な?(ダマレ)


2009.02.15
サカキ。

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